
朝晩の風に少しだけ涼しさが混じり始める8月末。冷たい飲み物ばかりだった台所に、そろそろ温かいスパイスの香りを戻したくなる頃です。鍋で煮出すチャイは材料も手順もシンプルですが、配合を少し変えるだけで驚くほど表情が変わります。基本の作り方から丁寧にご案内します。
チャイとは?煮出して作るミルクティーのこと
チャイは、インドやその周辺の国々で日常的に親しまれている煮出し式のミルクティーです。ティーポットに湯を注いで抽出する一般的な紅茶とは異なり、鍋に水と茶葉を入れて火にかけ、牛乳と砂糖を加えてさらに煮ます。強い火の力で成分をしっかり引き出すため、渋みと甘み、乳のコクがひとつにまとまった濃厚な味わいになります。
スパイスを加えたものは「マサラチャイ」と呼ばれ、カルダモンやシナモン、ジンジャーなどが香りの主役になります。逆にスパイスを使わず、茶葉と牛乳だけで濃く仕上げるスタイルもあり、こちらは日本で親しまれているロイヤルミルクティーに近い印象です。どちらが正解ということはなく、その日の気分や体調、合わせるお菓子に応じて選んでいただくのが良いと思います。
当店のティーサロンでお客様からよく聞かれるのは「チャイとロイヤルミルクティーは何が違うのですか」というご質問です。厳密な線引きはありませんが、当店では「スパイスの香りが主役ならチャイ、茶葉と牛乳のまろやかさが主役ならロイヤルミルクティー」とご説明しています。作り方の骨組みは同じですので、まずは一度作ってみて、そこから好みの方向へ寄せていくのが上達の早道です。
チャイに向く茶葉の選び方
チャイは牛乳と砂糖、スパイスに負けない骨格が必要です。そのため、香りの繊細さよりも「コクと力強さ」で選ぶのが基本になります。おすすめは、麦芽のような甘い香りとしっかりしたボディを持つアッサムです。手軽に始めたい方には、1袋ずつ密封されたティーベロップ アッサム 5枚入りを2袋使う方法も便利です。ティーバッグでも煮出しには十分対応できます。
茶葉の細かさも仕上がりを左右します。細かく丸めたCTC製法の茶葉や、粒の小さい等級(BOPなど)は短時間でも濃く出やすく、煮出しに向いています。反対に大きな葉のダージリンは、繊細な香りが牛乳とスパイスに隠れてしまうため、チャイよりもストレートで楽しむほうがその魅力が活きます。産地ごとの性格の違いはアッサムとダージリンの違いをまとめたコラムで詳しくご紹介していますので、茶葉選びの参考になさってください。
変化球として人気なのが、アイルランド伝統の香りをまとったアイリッシュモルト 100gです。麦芽とカカオを思わせる甘い香りが牛乳と非常によく合い、シナモンだけを添えた簡単なチャイにすると、お菓子のような満足感が生まれます。スパイスを最小限にしたい方にもおすすめの一本です。ほかにも煮出しに向く茶葉はチャイ向けの茶葉カテゴリやミルクティー向けの茶葉カテゴリにまとめてご紹介しています。
スパイスの種類と使う量の目安
スパイスは種類を増やせば良いというものではありません。最初は2、3種類に絞り、香りの輪郭をつかむことをおすすめします。以下は2杯分(仕上がり約300ミリリットル)を作る際の目安です。
| スパイス | 香りの特徴 | 2杯分の目安 | 使い方のコツ |
| カルダモン | 清涼感のある甘い香り。チャイの中心 | 3粒 | 殻を軽く潰して種を出すと香りが立つ |
| シナモン | 丸みのある甘さと温かみ | スティック半本 | 最初から水と一緒に煮ると穏やかに広がる |
| ジンジャー(生) | きりっとした辛みと後味の余韻 | 薄切り2枚 | 入れすぎると渋みが強調されるので控えめに |
| クローブ | 濃く重い甘苦さ。少量で存在感大 | 1、2粒 | 3粒を超えると全体を支配しがち |
| ブラックペッパー | 後を引く刺激。寒い日向き | 2粒 | 粗く砕いて仕上げ間際に加える |
| フェンネル | やわらかい甘い香り | ひとつまみ | 辛みを抑えたい方の調整役に |
まずはカルダモンとシナモンの2種類。物足りなければジンジャーを足す。この順番で試していただくと、自分の好みの位置がはっきりします。粉状のスパイスは香りが早く立ちますが濁りやすいため、ホールのものを潰して使うほうが澄んだ後味に仕上がります。
鍋で煮出す本格チャイの作り方
2杯分(仕上がり約300ミリリットル)の配合を、濃さ別に整理しました。牛乳の割合が増えるほどまろやかに、水の割合が増えるほど紅茶らしい輪郭が残ります。
| タイプ | 水 | 牛乳 | 茶葉 | 砂糖 |
| 紅茶感を残す標準タイプ | 150ミリリットル | 150ミリリットル | 6グラム | 小さじ2 |
| 濃厚タイプ | 100ミリリットル | 220ミリリットル | 8グラム | 小さじ2から3 |
| すっきりタイプ | 200ミリリットル | 100ミリリットル | 5グラム | 小さじ1 |
手順
1. 小鍋に水と潰したスパイスを入れ、中火で沸かします。沸いてから30秒ほど煮て、香りを湯に移します。
2. 火を弱めて茶葉を加え、1分から2分ほど煮出します。水面が濃い赤褐色になれば十分です。
3. 牛乳を加え、鍋のふちに細かな泡が浮く程度の火加減で2分から3分。ここで沸騰させないことが大切です。牛乳が煮立つと風味が損なわれ、独特の匂いが出ます。
4. 砂糖を加えて溶かし、火を止める直前に一度だけ大きく煮立たせます。表面がふわりと持ち上がったら火から外します。
5. 茶こしで丁寧に濾し、温めておいたカップに注ぎます。
全体でおよそ7分から8分。「長く煮れば濃くなる」と考えて10分以上煮てしまうと、渋みばかりが際立ちます。茶葉が湯に触れている時間の考え方は紅茶の蒸らし時間の目安をまとめたコラムもあわせてご覧ください。
失敗しないための3つのコツ
ひとつめは、牛乳の質と温度です。乳脂肪分の高い牛乳ほどコクが出ますが、加熱に強い種類を選ぶと風味が濁りにくくなります。当店では紅茶に合わせて選んだロイヤルミルクティー専用牛乳もご用意しており、はじめての方でも味がぶれにくくなります。
ふたつめは、砂糖を入れるタイミングです。チャイの甘みは味を整えるだけでなく、スパイスの香りを口の中で長く保つ役割も担います。最初から入れると煮詰まった重さが出やすいので、仕上げの直前に加えるのがおすすめです。
みっつめは、鍋の大きさ。300ミリリットルを作るなら直径14センチから16センチの小鍋がちょうど良く、液面が浅すぎると吹きこぼれ、深すぎると香りが立ちません。名古屋の実店舗でチャイの作り方をご相談いただくと、意外にもこの「鍋のサイズ」の話でご納得いただくことが多いのです。火加減が難しいと感じている方は、まず一回り小さな鍋に替えてみてください。
残暑の時期に楽しむアレンジ
まだ日中は暑い8月末には、濃く作ったチャイを氷で一気に冷やすアイスチャイが向いています。上の濃厚タイプの配合で作り、砂糖を少し多めにして、グラスいっぱいの氷に注ぎます。急冷すると香りが閉じ込められ、スパイスの余韻がすっきり残ります。冷たい紅茶全般のコツはクリームダウンを防ぐコラムも参考になります。
夜に楽しみたい方や、お子様と一緒に飲みたい場合は、紅茶の代わりにルイボスやハーブを使う方法もあります。ノンカフェインの茶葉でもスパイスを合わせれば十分に満足感のある一杯になります。合わせるお菓子には、香りの重なるアールグレイのパウンドケーキがよく馴染みます。
よくある質問
Q. ティーバッグでも本格的なチャイは作れますか
作れます。煮出しに使う場合はタグと紐を切り落とし、2杯分で2袋を目安にしてください。袋の中で茶葉が動きにくいため、リーフより30秒ほど長めに煮ると濃さが揃います。煮出し終わったら強く絞らず、静かに引き上げると雑味が出にくくなります。
Q. スパイスは粉末でも代用できますか
代用できます。ただし香りの立ち上がりが早く、飲み終わりに粉が残ることがあります。粉末を使う場合は2杯分で合計小さじ4分の1程度から始め、牛乳を加える段階で入れると角が立ちにくくなります。澄んだ口当たりを求めるなら、ホールを軽く潰して使う方法をおすすめします。
Q. 作ったチャイは保存できますか
牛乳を含むため、その日のうちに飲み切ることをおすすめします。どうしても取り置く場合は、粗熱を取ってから冷蔵し、当日中にお召し上がりください。温め直すときは弱火でゆっくり、沸騰させないようにすると風味の落ち込みが少なく済みます。
まとめ
- チャイは鍋で煮出すミルクティー。スパイスを加えたものがマサラチャイと呼ばれます
- 茶葉はコクの強いアッサムや細かい等級が向き、繊細な香りの茶葉はストレート向きです
- スパイスはカルダモンとシナモンの2種類から始め、少しずつ足していくのがおすすめです
- 2杯分は水150ミリリットル、牛乳150ミリリットル、茶葉6グラムが基本の目安です
- 牛乳を加えたら沸騰させず、砂糖は仕上げ直前に加えると香りが澄みます
- 煮出し時間は全体で7分から8分。長く煮すぎると渋みが際立ちます
- 残暑の時期は濃く作って急冷したアイスチャイが快適に楽しめます