
秋が深まり、温かい紅茶がうれしい季節になりました。先日、SNSで「ロシアでは紅茶にジャムを入れて飲む」という話題が広がり、「実際はジャムを小皿に取ってなめながら飲む」という声が多く集まったことをご存じでしょうか。今日はロシアンティーのジャムの飲み方を、紅茶の知識から紐解きます。
SNSで話題になった「ロシアンティーのジャム論争」
きっかけは、ロシアでの紅茶の飲み方を紹介する投稿でした。日本では長らく「ロシアンティー=紅茶にジャムを溶かし入れたもの」として知られてきましたが、その投稿に対して「現地ではジャムを紅茶の中に入れるのではなく、小皿に取って少しずつなめながら、ストレートの紅茶を飲む」という反応が数多く寄せられ、話題になりました。
どちらが正しい、という話ではありません。地域や家庭によって作法はさまざまで、諸説あるというのが実情です。ただ、「ジャムを紅茶に溶かす」のと「ジャムをなめながら紅茶を飲む」のとでは、口の中で起こることがまったく違います。そこにこそ、紅茶を楽しむうえでの面白いヒントが隠れています。
当店のティーサロンでも、この話題が出てから「ロシアンティーって結局どうやって飲むのが正しいんですか」とお尋ねいただくことが増えました。スタッフはいつも「どちらも楽しいので、まず両方試してみてください」とお答えしています。実際に同じ茶葉で飲み比べていただくと、ほとんどのお客様が「味が別物ですね」と驚かれます。
紅茶に入れる場合となめる場合、何が違うのか
ジャムを紅茶に溶かすと、甘さと果実の酸味が液体全体に均一に広がります。紅茶の渋みはやわらぎ、果実風味のついた甘い飲み物になります。寒い日に体を温めたいときや、お子様と一緒に楽しむときには向いた飲み方です。
一方、ジャムを小皿に取ってなめてから紅茶を含むと、口の中では甘さと紅茶の香りが別々に立ち上がり、後から混ざり合います。紅茶そのものの香りや渋みは保たれたまま、甘さが輪郭を際立たせる——いわば、紅茶とお菓子を同時に味わうようなイメージです。茶葉本来の個性を楽しみたい方には、こちらのほうが向いています。
| 飲み方 | 味わいの特徴 | 向く茶葉 | ジャムの量の目安 |
| 紅茶に溶かす(日本で広まった形) | 果実風味の甘い一杯に。渋みがやわらぐ | アッサム、イングリッシュブレックファーストなどコクのある茶葉 | カップ1杯(150ml)に小さじ1程度 |
| 小皿のジャムをなめながら飲む | 紅茶の香りが残り、甘さが後から重なる | ダージリン、アールグレイなど香り高い茶葉 | 小皿に小さじ2〜3、少しずつ |
| ジャムを添えてスプーンで少量ずつ加える | 甘さを自分で調整できる折衷案 | セイロン系、ブレンドティー全般 | まず小さじ1/2から |
どの飲み方でも共通して大切なのは、紅茶そのものをきちんと淹れておくことです。甘みを加える前提だからと抽出を適当にしてしまうと、香りの土台が弱く、ジャムの甘さだけが前に出てしまいます。茶葉の量と蒸らし時間の基本は、紅茶の淹れ方の基本をご確認ください。
ジャムに合う紅茶の選び方
溶かすならコクのある茶葉を
ジャムを紅茶に溶かす場合、茶葉の個性は甘さに覆われやすくなります。そのため、ミルクティー向きとされるようなしっかりしたボディの茶葉を選ぶと、甘さに負けず味の芯が残ります。ティーベロップ アッサムのような、麦芽を思わせるコクのある茶葉は好相性です。少し濃いめに淹れて、ジャムを加えたときにちょうどよくなるよう設計するのがコツです。
なめるなら香りで選ぶ
ジャムを小皿でなめながら飲むスタイルなら、紅茶はストレートで味わうことになります。つまり、茶葉の香りがそのまま主役です。マスカットのような華やかさを持つダージリンスーパーファインや、ベルガモットが香るゴールデンアールグレイのような茶葉だと、ベリーのジャムの酸味と香りが重なり合い、ティータイムが一気に豊かになります。
ジャムの種類で変わる相性
ジャムもそれぞれ性格が違います。いちごやラズベリーなどのベリー系は酸味がはっきりしているため、香り高い茶葉と合わせると果実感が立ちます。あんずやマーマレードのような柑橘・核果系は、アールグレイのベルガモットと方向性が近く、まとまりのよい組み合わせになります。ブルーベリーやカシスのように色の濃いジャムは、溶かすと紅茶の色が大きく変わるので、透明なグラスで楽しむと見た目も愉しめます。
| ジャムの種類 | 合わせたい茶葉 | おすすめの飲み方 |
| いちご・ラズベリー | ダージリン | 小皿でなめながらストレートで |
| マーマレード・あんず | アールグレイ | 少量ずつ溶かして香りを重ねる |
| ブルーベリー・カシス | アッサム、ブレンド系 | 溶かしてグラスで色も楽しむ |
| りんご・洋梨 | フレーバーティー、ルイボス | 夜はノンカフェインで温かく |
香りで選ぶ楽しさを広げたい方は、フレーバーティーのカテゴリもご覧ください。果実やスパイスの香りがついた茶葉は、ジャムとの掛け合わせの幅がぐっと広がります。
ご家庭で試すときの手順とコツ
難しい道具は要りません。用意するのは、きちんと淹れた紅茶、小皿、ティースプーン、そしてお好みのジャムです。
まず紅茶は、茶葉3gに対して熱湯300mlを目安に、沸騰したての湯を高い位置から注ぎます。ダージリンなら3分前後、アッサムなど細かい茶葉なら2分半程度が目安です。抽出が終わったら茶こしでしっかり注ぎ切り、茶葉を湯に残したままにしないこと。これは甘みを加える飲み方では特に重要で、渋みが出すぎると、ジャムの甘さと衝突して重たい味になります。
次にジャムを小皿に小さじ2ほど取り、スプーンの先でごく少量を舌にのせ、そのまま紅茶を含みます。最初は「こんなに少しでいいの」と思う量で十分です。甘さが口に残っているうちに紅茶を飲むことで、ふたつの香りが重なります。溶かす場合は、カップ1杯に小さじ1から始めて、好みで足していくと失敗しません。
当店のティーサロンでスタッフが試したときに面白かったのが、同じいちごジャムでも、果肉がごろっと残るタイプと、なめらかに裏ごしされたタイプで印象がまったく違ったことです。果肉タイプはなめる飲み方に向き、噛んだときの果実感が紅茶の香りを引き立てます。なめらかなタイプは溶けやすいので、紅茶に混ぜる飲み方に向いていました。お手元のジャムの質感で選び分けてみてください。
なお、紅茶に甘みを加えると見た目が変わることもあります。糖分や酸の影響で色が濃く見える現象については、紅茶にはちみつを入れると黒くなる理由でも触れていますので、気になる方はあわせてどうぞ。
秋の夜長にぴったりな組み合わせ
10月に入り、名古屋も日が落ちるのが早くなりました。夕方以降のティータイムには、甘さを添えた紅茶がよく似合います。ベリーのジャムを少しなめながら、ゆっくりストレートの紅茶を味わう時間は、秋の夜長にふさわしい静かな楽しみです。
カフェインが気になる時間帯なら、紅茶の代わりにルイボスティーやハーブティーを合わせるのもおすすめです。ルイボスティーはほんのりとした甘みがあり、りんごや洋梨のジャムと穏やかに調和します。
また、香ばしいコクのあるアイリッシュモルトは、ジャムと合わせるよりもミルクティーにして、ジャムを添えた焼き菓子と一緒に楽しむのが当店のおすすめです。ティーサロンでも「ジャムの話を聞いて試したけれど、アイリッシュモルトはミルクのほうが好みでした」というご感想をいただくことがあり、茶葉ごとの向き不向きを探すこと自体が楽しいものだと感じています。
よくある質問
Q. 日本で言うロシアンティーは間違いなのでしょうか?
A. 間違いというより、日本で独自に広まった形と考えるのが自然です。現地でも家庭や地域によって作法は異なると言われており、諸説あります。ジャムを溶かす飲み方も立派なひとつの楽しみ方ですので、気兼ねなくお試しください。
Q. ジャムの量はどのくらいが適量ですか?
A. 紅茶に溶かす場合はカップ1杯(150ml)に小さじ1程度から。なめる場合は小皿に小さじ2〜3を取り、スプーンの先でごく少量ずつが目安です。甘さは後から足せますので、少なめから始めるのが失敗しないコツです。
Q. ティーバッグでも同じように楽しめますか?
A. もちろん楽しめます。マグカップで手軽に淹れられるジョイオブティー 7種類セットのような個包装タイプなら、いろいろな茶葉とジャムの組み合わせを試しやすく、飲み比べにも便利です。抽出後はティーバッグを引き上げ、強く絞らないようにしてください。
Q. 砂糖やはちみつとの違いはありますか?
A. ジャムは甘みに加えて果実の酸味と香り、そして果肉の食感が加わる点が大きな違いです。砂糖が甘さだけを足すのに対し、ジャムは風味そのものを重ねます。そのぶん茶葉との相性も出やすく、選ぶ楽しさがあります。
まとめ
- SNSでは「ロシアでは紅茶にジャムを入れる」という話題に対し、「小皿に取ってなめながら飲む」という声が多く集まり話題になりました。作法には諸説あります。
- ジャムを溶かすと果実風味の甘い一杯に、なめながら飲むと紅茶の香りが保たれたまま甘さが重なります。
- 溶かすならアッサムなどコクのある茶葉、なめるならダージリンやアールグレイなど香り高い茶葉が向いています。
- ジャムの量は紅茶150mlに小さじ1程度から。果肉入りはなめる用、なめらかなタイプは溶かす用と使い分けると好相性です。
- どの飲み方でも、紅茶をきちんと淹れることが味の土台になります。
- 夜のティータイムにはルイボスやハーブティーと合わせる楽しみ方もおすすめです。