
ここ最近、SNSやニュースで「第三次紅茶ブーム」という言葉を見かけた方も多いのではないでしょうか。同じ時期に海外では抹茶が大人気になり、日本の抹茶が品薄になったことも話題となりました。今、お茶の世界で何が起きているのか、紅茶専門店の視点で整理してみます。
「第三次紅茶ブーム」はどこから出てきた言葉?
きっかけのひとつが、日本紅茶協会が発表した「2025年紅茶業界10大ニュース」です。そこには「第三次紅茶ブームが到来」という項目が並び、業界内外で話題になりました。同じリストには、コンビニエンスストアのいれたてカウンターティーが翌春に2,000店規模へ広がること、6月10日が「アイスティーの日」に制定されたこと、和紅茶への関心が高まっていること、日本紅茶協会認定の「おいしい紅茶の店」が過去最多の267店に達したことなども挙げられています。
つまり「ブーム」と呼ばれているのは、特定の商品が一時的に売れたという話ではありません。飲む場所、飲む機会、国産の選択肢、提供するお店の数──紅茶に触れる入口が同時にいくつも増えた、という現象です。第一次が明治期の輸入紅茶の広まり、第二次が1980年代以降の紅茶専門店ブームだったという説もありますが、いずれも諸説あり、研究者や業界関係者によって区切り方は異なります。大切なのは「何次か」よりも、今まさに紅茶が選ばれやすい環境が整っているという点でしょう。
なぜ今、紅茶なのか|3つの背景
1. アフタヌーンティー巡り(ヌン活)の定着
ホテルやサロンのアフタヌーンティーを巡る楽しみ方が、特別な日の贅沢から日常の趣味へと広がりました。写真に残したくなる美しさと、数種類の茶葉を飲み比べられる体験が重なり、「紅茶って意外と種類があるんだ」と気づく入口になっています。
2. ギフトとしての扱いやすさ
日持ちがして、相手の好みに幅広く合わせられ、価格帯も選びやすい。紅茶はギフトとして非常にバランスのよい贈り物です。当店でも、改まった贈答から手土産まで、用途の幅が年々広がっていると感じます。贈り物選びの考え方は紅茶ギフトを5000円で選ぶならのコラムでも詳しくご紹介しています。
3. 手軽に買える場所が増えた
淹れたての紅茶をその場で買える場所が増え、ペットボトルやカフェ以外の選択肢ができました。入口が増えれば、「もっとおいしいものを家でも飲みたい」と考える方も自然に増えていきます。
世界の抹茶人気と紅茶ブーム、似ているところ・違うところ
2025年は海外で抹茶の人気が急上昇し、日本産の抹茶が品薄になったことが大きく報じられました。紅茶ブームと抹茶ブームは別の現象に見えますが、背景には共通点があります。
| 観点 | 海外での抹茶人気 | 日本での紅茶ブーム |
| 広がり方 | SNSの写真・動画から一気に拡散 | 店舗・イベント・SNSが同時進行 |
| 魅力の軸 | 色の鮮やかさと点てる所作 | 香りの多様さと合わせる楽しみ |
| 飲まれ方 | ラテなどミルクと合わせる形が中心 | ストレート・ミルク・アイスと幅広い |
| 原料 | 碾茶を石臼などで粉にする | 茶葉を完全発酵させて乾燥 |
| 家庭での再現 | 茶筅など道具がやや必要 | ポットと湯があれば始められる |
抹茶も紅茶も原料は同じ茶の樹(カメリア・シネンシス)です。違うのは製法で、抹茶は摘んだ葉を発酵させずに蒸して乾かし、粉にしたもの。紅茶は葉の酵素の働きを生かして完全に発酵させ、赤みのある水色(すいしょく)と芳醇な香りを引き出します。同じ植物からまったく違う飲み物が生まれるという面白さが、世界的な関心の下地になっていると言えそうです。茶葉の全体像は紅茶の種類一覧のコラムで地図のように整理しています。
当店のティーサロンでお客様からよく聞かれるのは、「抹茶が好きなのですが、紅茶で似た方向のものはありますか」というご質問です。そんなときは、渋みに芯があり香りが澄んだダージリンスーパーファインをおすすめすることが多いです。お菓子に負けず、口の中をすっと整えてくれる点が抹茶の役割と近いためです。
和紅茶への関心も、ブームの重要な一部
10大ニュースに「和紅茶への関心の高まり」が入ったことも見逃せません。国内で栽培された茶葉を紅茶に仕立てたもので、やわらかな甘みと穏やかな渋みが特徴とされています。海外産の紅茶と比べてどちらが優れているという話ではなく、選択肢が増えたこと自体が紅茶文化の厚みにつながります。産地や製法で味わいが変わる仕組みを知りたい方は、紅茶のラベルで産地を見る方法も参考になります。
ブームの一杯を、家庭で一段おいしく
外で飲んでおいしかった紅茶を家で再現しようとして、「味が薄い」「渋い」とつまずく方は少なくありません。実は手順はとてもシンプルで、湯の量・茶葉の量・時間の3つを決めるだけです。下の表を目安にしてみてください。
| 茶葉 | 湯温 | 茶葉量(湯300ml) | 蒸らし時間 |
| ダージリン(大きめの茶葉) | 95度以上 | 6g | 3分〜4分 |
| アッサム(細かい茶葉) | 95度以上 | 5g | 2分30秒〜3分 |
| フレーバーティー | 95度前後 | 5g | 2分30秒〜3分 |
| ミルクティー向け | 95度以上 | 7g | 3分前後 |
ポイントは、汲みたての水を沸かして空気を含んだ湯を使うこと、そしてポットをあらかじめ温めておくこと。この2つだけで香りの立ち方がはっきり変わります。抽出が終わったら茶葉は取り除き、淹れたての状態でお召し上がりください。基本の手順は紅茶の淹れ方のゴールデンルールでも詳しく解説しています。
当店のティーサロンでお客様からよく聞かれるもうひとつの質問が、「まず何から始めればいいですか」というものです。ブームをきっかけに紅茶を始める方には、香ばしい甘い香りでミルクとも好相性のアイリッシュモルトをご案内しています。砂糖を足さなくても満足感があり、紅茶が得意でなかった方にも受け入れられやすい一本です。茶葉を量る手間が気になる方には、1枚ずつ個包装されたティーベロップ12種類セットから、好みの方向を探していただくのもおすすめです。
10月のティータイムに選びたい一杯
朝夕の空気が冷たくなる10月は、コクのある茶葉がよく似合う季節です。温かい紅茶に厚みのある味わいを求めるなら、ミルクと合わせる飲み方が楽しくなります。秋摘みのダージリンのように、この季節ならではの個性を味わえる茶葉もあります。種類ごとの特徴をまとめて見たい方はブラックティー(紅茶茶葉)のページが便利です。夜のひとときには、カフェインを控えたい方向けにハーブティーを用意しておくと、一日の中で飲み分けができます。
よくある質問
Q. 第三次紅茶ブームは一時的なものですか?
A. 先行きを断定することはできません。ただ、今回は特定商品の流行ではなく、購入できる場所、提供するお店の数、国産茶葉の広がりなど複数の要素が同時に動いている点が特徴だと言われています。紅茶に触れる機会が増えること自体は、文化として定着していく土台になると考えられます。
Q. 抹茶と紅茶、カフェインの量に違いはありますか?
A. 茶葉の種類、量、抽出の仕方によって大きく変わるため、一概に比較することはできません。抹茶は粉ごと飲む形式、紅茶は成分を湯に溶かし出す形式という違いもあります。気になる場合は、飲む時間帯で調整したり、ノンカフェインの選択肢を組み合わせたりする方法があります。
Q. 初めて茶葉を買うなら、何グラムくらいが適量ですか?
A. 毎日1杯程度なら100gで1か月前後が目安です。開封後は香りが少しずつ抜けていくため、数種類を一度にそろえるより、気に入った1〜2種を飲みきるペースがおすすめです。少量ずつ試したい方はお試しセットから始めると無駄がありません。
Q. 外のお店で飲んだ味を家で再現できません。
A. 多くの場合、原因は茶葉の量か湯温です。計量スプーンがない場合でも、ティースプーン山盛り1杯がおおよそ2.5g前後と覚えておくと調整しやすくなります。沸騰直後の湯を使い、ポットに蓋をして時間を計る。この2点を守るだけで印象が変わります。
まとめ
- 日本紅茶協会の2025年10大ニュースに「第三次紅茶ブームが到来」が挙がり、話題となりました。
- 同じ年、海外で抹茶人気が高まり日本産抹茶が品薄になったことも大きく報じられました。
- 紅茶と抹茶は同じ茶の樹から生まれ、発酵の有無で性格が分かれます。
- ブームの背景には、アフタヌーンティーの定着、ギフト需要、買える場所の増加があります。
- 和紅茶への関心や、認定店が267店に増えたことも紅茶文化の厚みを示しています。
- 家庭では茶葉の量・湯温・時間の3つを整えるだけで、味わいが大きく変わります。