
秋の朝、マグカップにティーバッグをひとつ。手軽だからこそ「もっとおいしく淹れられないかな」と思う瞬間はありませんか。SNSではティーバッグの裏ワザ動画が繰り返し話題になり、紅茶の専門家が答える投稿にも注目が集まっています。今日は中でも大切な「絞らない」という一手について、理由からご説明します。
SNSで繰り返し話題になる「ティーバッグの淹れ方」
「ティーバッグでおいしく紅茶を淹れたい」という素朴な質問に、紅茶の専門家が丁寧に答えた投稿が注目を集めたことがありました。また、カップの中でティーバッグを振り回す、スプーンで押し付けて搾り出す、電子レンジで加熱するといった「裏ワザ」も、時期を変えて何度もSNSで話題になっています。
興味深いのは、そうした話題の多くで必ずといっていいほど「絞るか、絞らないか」で意見が分かれる点です。濃く出したいから絞る、という方は少なくありません。一方で紅茶を仕事にしている人の多くは「絞らないでください」と答えます。どちらも「おいしく飲みたい」という同じ願いから出ているのに、答えが真逆になるのはなぜでしょうか。その理由は、紅茶という飲みものが「何を、どの順番で、お湯に渡しているか」を知ると、すっきり理解できます。
なお、電子レンジでティーバッグごと加熱する方法は、容器の素材やタグの金具の問題もあり、当店ではおすすめしていません。やかんやポットで沸かしたての湯を使う、という基本をおすすめします。
絞らない理由|渋みと雑味は「最後」に出てくる
紅茶の味を形づくる主な成分は、香りのもとになる精油、うまみや甘みにつながるアミノ酸類、そして渋みと色を担うタンニン(紅茶ポリフェノール)やカフェインです。お湯に触れた茶葉は、まず香りと軽やかな味わいを放ち、時間の経過とともに渋みのもとになる成分をゆっくり出していきます。
ティーバッグを引き上げる直前、袋の中にはいちばん濃く煮詰まったような液体が残っています。ここを指やスプーンで押し潰すと、その濃い液と、さらに細かい茶葉の粉(ダスト)がカップに一気に落ちます。結果として色は濃くなりますが、同時に舌に残るような強い渋みと、にごりや粉っぽさが加わります。「濃くなった」のではなく「えぐみが足された」状態に近いのです。
当店のティーサロンでお客様からよく聞かれるのが、「家で淹れると最後の一口だけ妙に苦いのはなぜ?」というご質問です。伺ってみると、ほとんどの方がティーバッグをスプーンに押し当てて搾ってから捨てていらっしゃいます。絞るのをやめていただくだけで、「同じティーバッグとは思えない」と驚かれることが本当に多いのです。
| 引き上げ方 | 水色(すいしょく) | 味わい | 後味 |
| 絞らずに静かに引き上げる | 澄んだ明るい赤褐色 | 香りが立ち、角のない丸み | すっと切れる |
| スプーンで強く絞る | 濃いが、ややにごる | 渋みが前に出て香りが隠れる | 舌に残りやすい |
| カップの中で激しく振る | 短時間で濃く出る | 粉っぽさが出ることも | ざらついた印象 |
「薄い気がするから絞る」という場合、本当の原因は絞らないことではなく、お湯の温度が低い、蒸らし時間が足りない、カップに対してお湯が多すぎる、のいずれかであることがほとんどです。足すべきは圧力ではなく、熱と時間だとお考えください。
絞らずにおいしく淹れる基本の手順
当店がおすすめしている手順はとてもシンプルです。道具を増やす必要はありません。
1. カップを温め、沸騰したてのお湯を先に注ぐ
まずカップに湯を少量入れて回し、温めてから捨てます。次に、沸騰したての湯をカップへ先に注ぎます。ティーバッグを先に入れてから湯を当てると、袋の表面だけが強く当たって抽出がかたよりやすくなります。湯が先、茶葉が後です。
2. ティーバッグを静かに沈める
湯の中にそっと入れます。このとき小さな気泡が立ちのぼれば、茶葉が湯の対流にのって動いている合図です。ロンネフェルトのティーベロップのような平たい形状のティーバッグは、茶葉が袋の中で広がりやすく、湯が通り抜けやすいのが特長です。
3. 小皿で蓋をして蒸らす
カップに小皿やソーサーをのせて蓋をします。これだけで湯温の下がり方がゆるやかになり、香りが逃げるのも防げます。マグカップで淹れる方ほど、この一手間の差が大きく出ます。
4. 軽く2〜3回ゆらしてから引き上げる
時間が来たら蓋を外し、ティーバッグを軽く2〜3回ゆらします。袋の中と外の濃さをなじませるための動作で、強く振る必要はありません。そして絞らずに、静かに持ち上げて受け皿へ。最後の数滴は自然に落ちるのを待つだけで十分です。
| 茶葉の種類 | 湯温の目安 | 湯量の目安 | 蒸らし時間 |
| アッサム・イングリッシュブレックファースト | 95〜100度 | 150〜180ml | 3分前後 |
| ダージリン | 95度前後 | 160〜200ml | 3分前後 |
| アールグレイなどフレーバーティー | 95度前後 | 150〜180ml | 2分30秒〜3分 |
| ハーブティー(カモミール等) | 100度 | 180〜200ml | 4〜5分 |
時間の感覚をつかみたい方は、紅茶の蒸らし時間の目安をまとめたコラムもあわせてご覧ください。茶葉ごとの考え方が整理できます。
ミルクティーにしたいときはどうする?
「ミルクを入れるなら濃く出したいから絞りたい」というお声もよく頂戴します。その場合は絞るのではなく、湯量を減らすのが正解です。通常150mlで淹れているところを100〜120mlにし、蒸らし時間を30秒ほど長めにとります。そこへ温めた牛乳を加えれば、渋みの角が立たないまま、ミルクに負けないコクのある一杯になります。
秋の冷え込む朝には、麦芽の香ばしさが身上のアイリッシュモルト 100gのような茶葉をリーフで淹れるのも格別ですが、ティーバッグならティーベロップ アッサム 5枚入りが扱いやすく、ミルクとの相性も良好です。ミルクティー向けの茶葉から選ぶのもおすすめです。
当店のティーサロンで、スタッフがティーバッグを絞らずに引き上げる所作をご覧になったお客様から、「お店では振らないんですね」と声をかけていただくことがよくあります。カップの中で激しく揺らさないのは、見た目の上品さのためだけではなく、細かい茶葉の粉が舞い上がって口当たりを損なうのを避けるためでもあります。
秋のティーバッグ選び|香りで季節を感じる
10月に入り、朝晩の空気がはっきりと秋めいてきました。夏の間は冷たい一杯が中心だった方も、そろそろ温かい紅茶が恋しくなる頃です。ティーバッグは1杯ずつ淹れられるので、季節の変わり目に何種類か試してみるのに向いています。
柑橘の香りが澄んだ空気によく合うティーベロップ アールグレイ 5枚入り、繊細な香りを楽しみたい日のティーベロップ ダージリン 5枚入り、夜のひとときにはカフェインを含まないカモミールやルイボスバニラ。いろいろ味わってみたい方には、マグカップでそのまま淹れられるジョイオブティー 12種類セットが便利です。
ティーバッグのラインナップはティーベロップのカテゴリからご覧いただけます。個包装なので、職場の引き出しに忍ばせたり、ちょっとした贈りものに添えたりするのにも向いています。
よくある質問
Q. 絞らないと濃さが足りません。どうすればいいですか?
A. 湯量を減らすか、蒸らし時間を30秒ほど延ばしてください。沸騰したての湯を使い、カップに蓋をするだけでも抽出は目に見えて変わります。圧力で搾り出した濃さは、渋みとにごりを伴いますので、温度と時間で調整するのが確実です。
Q. カップの中でティーバッグを何度も上下させてもよいですか?
A. 激しく上下させると細かい茶葉の粉が舞い、口当たりがざらつくことがあります。蒸らしが終わってから軽く2〜3回ゆらす程度で十分に均一になります。
Q. ティーバッグのタグやひもは湯に入れても大丈夫ですか?
A. 紙のタグや糸がカップに落ちると、湯に浸かって風味に影響することがあります。カップの縁の外側に出しておくか、タグを持ち手側に掛けておくときれいに淹れられます。
Q. 電子レンジでカップごと加熱する方法は?
A. 当店ではおすすめしていません。容器の耐熱性やタグの金具の有無など注意点が多く、沸騰したての湯を注ぐ方法のほうが安定しておいしく仕上がります。詳しくは電子レンジで紅茶を淹れる話題を扱ったコラムもご覧ください。
Q. ティーバッグとリーフティー、味は違いますか?
A. ロンネフェルトのティーベロップは茶葉が広がる空間を確保した設計で、リーフに近い香りを引き出せます。ただし、じっくり時間をかけて飲む日はリーフティーもおすすめです。ブラックティーの茶葉から気分に合うものを選んでみてください。
まとめ
- ティーバッグを絞ると、渋みのもとになる成分と細かい茶葉の粉が一度に落ち、えぐみとにごりの原因になります。
- 基本の手順は、沸騰したての湯を先にカップへ注ぎ、ティーバッグを静かに沈め、小皿で蓋をして蒸らすこと。
- 引き上げるときは軽く2〜3回ゆらすだけ。絞らず、静かに持ち上げます。
- 濃さが足りないときは、絞るのではなく湯量を減らすか蒸らし時間を延ばして調整します。
- 電子レンジでの加熱は、安全面と味わいの安定の観点からおすすめしていません。
- 秋は香りの立つアールグレイやコクのあるアッサムなど、1杯ずつ季節に合わせて選べるのがティーバッグの魅力です。